先日芝居を観に来てくださった、bar「十月」のママさんに、
お礼を言いがてら、ゴールデン街へ。
このママさんは、表現活動をする人を
いつも応援してくださっており
店の中では、月替わりで絵の個展をしていて、
積極的に、店内ライブを行い、
また、地方に出かけて演奏会を開く準備など、
いつも着々と、していらっしゃる。
私の芝居にもよく足を運んでくださるのだ。
ご自身はというと・・・
なんと、短歌を作って詠んでいらっしゃる。
それは、「短歌往来」という雑誌に12首も、書かれているくらいで
お店を始めてから、短歌のほうもはじめられたらしいのだが
新宿という土地に根ざした
ポワンとした明かりが揺れているような、そんな歌である。
短歌に、日常的に触れることはないのだが
初めて関心を持ったのは
新宿に住むホームレスのつくる短歌の本を手にしてからだ。
その、ホームレスFさんの作品に目をつけた
出版関係の方の力添えで
それらは、彼の自伝とともに
世に出ることになったのだ。
地べたにすわり、高い高い空を眺める視線が一貫して通った
素晴らしい本だった。
寒さをこらえながら、孤独をかみしめながら書いたのだろう。
Fさんは、その後、生活保護をもらえるようになって
小さなアパートに引っ越すのだが
近所の方とうまく行かなかったようで
また、路上に戻ってしまった。
収入は、自分で自分の本を売ることだった。
年末に、忘年会へ向かう道すがら、
西口大ガード下にいたFさんに再会し
そのまま忘年会に連れて行って
一緒に中華を食べてもらったことがあった。
かれこれ、十年前の話だ。
いま、どうしているだろう・・・・
先日の公演では、道浦母都子さんの短歌を使わせていただいたのだが
こちらも、人生を削り落とすような
それでいて、また這い上がれるような微かな光を残す
不思議な短歌ばかりだった。
どの歌人の作品も
選び抜かれた言葉がならんでいる。
まさに「ぎゅっと」詰め込んだ箱で
その箱の中から流れ出す何かが見える瞬間に
私はとても感動することがある。
それにひきかえ、芝居のセリフのなんと膨大で長ったらしいことか・・・
もっと、選ばなければ
もっと、探さなければ
無駄が多すぎる。
ママさんに「短歌往来」を頂いた。
カウンターの、隣にいた常連さんと、
それらを拝読しながら語り合う。
短歌というのは、一度に何人もの作品を読む気にはなれないが
ふと、広げたページに、心に響く1行があって
それがすばらしく大きな面積に広がることがある。
これからも、短歌と、いい出会いがありますように。
~本日のありがとう~
かんじゅく座講師陣のミーティング。
いつも、適切でやさしい助言をくれる。
ほんとうに、どうもありがとう。
Trackback(0) Comments(2) by 鯨エマ|2010-05-18 20:08
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