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突然の悲報(3)〜平和を信じて

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※今回の記事は3月初旬に書きあがっていましたが、諸事情でアップするのが遅れました。3月14日より、本土ではチベット人暴動に対する中国警察による武力弾圧が始まりました。この事態に深い悲しみを覚えるとともに、即刻武力弾圧を止め、両者平和的な解決を希望します。

「<アムド教育支援プロジェクト>チベットサポートSHRI」の支援先のホジョレ希望小学校は、来年、閉鎖されることになる。
68名の子供たちは、いったいどこに行ってしまうのだろうか。
何度も本土に問い合わせたけれど、村人の移住先は、まだ決まっていないという。
「本校へ行く子も入れば、町の学校に通う子もいると思う」と、ホジョレ希望小学校の先生からは元気のない答えが返ってくるだけだ。

3年前から中国では中学までが義務教育となったため、子供たちは学校に通うことはできるにちがいない。

町の学校は、漢民族も一緒の学校なのかと尋ねると、「チベット人だけの学校です」という返事。
少々、ほっとした。
初等教育の段階で二つの民族がもしも、一緒のクラスになった場合は、支配下にあるチベット語の授業が切り捨てられるはずだ。
文化というものは、言語が失われた瞬間に消滅する。それが間逃れただけでも幸運、と言わざるをえない。
ただし、中国語だけを学べばよい漢民族の子供に比べて、チベットの子供たちは、チベット語と中国語の両方を小学校から学ばねばならない。そのぶん、授業時間も勉強時間も長くなる。チベットの子供たちは、勤勉でなくては、この先を生きていけないことだけは確かだ。

なお、中国政府は海外からの小中学校への支援を今年1月から断り始めたそうで、本校の支援の道も閉ざされてしまった。
ホジョレ希望学校の本校の環境はかなり劣悪で、幼児たちの宿舎の壁は、真っ黒でドロドロに汚れ、床には雨水で池ができていた。天井は無惨にも壊れていた。
しかも、幼児のクラスには机があるだけで、椅子もない。4、5歳の小さな子供が座る椅子もなく、立ち尽くしている姿を見たときは胸が詰まりそうになった。
SHRIは、ホジョレ希望小学校の宿舎を建設と同時に、本校のメンテナンスを行うつもりだった。
せめて本校の宿舎のメンテナンスはできないものか?と、教育長に何度か問い合わせてもらったが、やはり支援を受け付けることはできないとのことであった。

海外からの支援を受け付けていた政府が、急に断りだしたその理由は分からない。オリンピック前に、自国の豊さだけを全前に押し出したいということだろうか。

今回のこの悲報を子供たちのスポンサーの方々にお知らせしたところ、悲しみと怒りの声とともに、「子供たちの成長を見守れなくて、とても残念です」、というお便りをたくさんいただいた。
遠く離れたチベット高原にいる、会ったことのない子供たちの成長を楽しみにしてくださったスポンサーの皆様の温かなお心に深く感謝するとともに、この事態の過酷さを思うにつけ、悲しみは増すばかりだ。

今、中国全土は物価が高騰していると聞く。
「野菜も肉もべらぼうに高くなった」と、チベット人の青年が最近、嘆いていた。
この冬の豪雪で流通がストップしたこともひとつの原因だが、おそらくオリンピック前の経済成長の煽りと、石油の原価高がかなり影響しているのだろう。(3月11日、前年度比で、食品23%、中でも豚肉63.4%上昇と報道された。なんという物価上昇率!)
「遊牧民が町に住んだら、大変なことになる」、とチベット人の青年は言った。
「だって、彼らは肉好きですよ。肉しか食べない。町の人だって肉が高くてなかなか買えないのに、彼らはどうやって生きていくつもりなんだろう?」

「遊牧民たち、不安な気持ちでいっぱいだろうね」。
「町で暮らすチベット人にとっても遊牧民の移住は不安ですよ。町には町のルールや常識があるけど、遊牧民は草原以外のことは何も知らない。町の人間にとっては非常識なことでも、彼らにとっては常識だったりする。いったいこの先何が起こるか分からない。町に住んでるチベット人だって、不安ですよ」。

強制移住・・・。このニュースを真っ先に伝えた友人はこう言った。
「それって、アウシュビッツと同じね」。
強制移住地区に移り住む遊牧民は、いったい10年後にどうなっているのだろう。人の心も町のストリートも穏やかであり続けるだろうか。貧困で犯罪が多発しないことを祈るばかりである。

仏教の教えとともに「思いやりの心」が根付いたチベット人。
「思いやりの心」こそが世界を変える、と私は信じている。
どんな圧政を受けても非暴力の精神を貫き、「思いやりの心」によって、アジアの中心地ヒマラヤ高原に「平和」が築かれる日を、私は辛抱強く待ち望んでいる。

» Tags:チベット,

Trackback(0) Comments(4) by 北澤杏里|2008-03-16 13:01

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