大晦日は○パ(のんびり父さん)の実家へ行って過ごすことが多い。義母の心づくしの料理と、近所で評判の美味い寿司が食卓に並ぶ。そして夕方から夜半まで、長々と腰を落ち着けて、一家そろって飲んで食べる。ああ幸せ。この一年も健康に過ごせたことに乾杯!と、まずビール。こんなことがあった、あんなことがあった、と語らいながら夜は更ける。そのうち義妹がどこからかなかなかのワインを持ち出してきた。義父と○パはそろそろ日本酒にするらしい。こんな何でもないようで、しかし実はとても特別な夜に、真打ち的な威風をたたえて登場するのが、須藤本家(株)の純米大吟醸「花薫光」である。
須藤本家は笠間市友部にある酒蔵。「郷の誉」の銘柄で、製造過程、質の違いにより多種展開している。少なくとも永治元年(1141年)には酒造りをしていたと検証されている、現存する蔵としてはなんと日本最古の酒蔵である。現当主は実に55代目。家訓に基づき伝統を重んじながらも、独自の販売哲学にそってユニークな販路を拓いている。
邦人の日本酒離れとは無縁に、酒はいま世界で高い評価を受けている。例えばこの夏公開された映画「オーシャンズ13」では(12よりはるかに良い!)、アル・パチーノ扮するラスベガスのホテルオーナーが、プレオープンのパーティでVIPの客たちに向かって「今宵は久保田をご用意しています」と、酒をバリューアップのアイテムとして使っているくらいだ。(酒はsakiと発音していたよ)
さて「花薫光」はと言えば、通常720ml10,500円で売られているのだが、2005年には無濾過生の12年物(同720ml)が、1本25万円(100本限定)で発売されたことがある。アメリカの有名なソムリエがそれに13,000ドル(約143万円)の値をつけたことでも話題になった。このエピソードと日本最古の酒蔵という肩書きで、贈答品にしたら茨城の格を上げてくれそうだ。
そのお味はと言えば、とにかく香りがとても華やか。グラスを鼻先に持ってくるだけで、南国のフルーツのような芳香が立ち昇ってくる。口に含むとパイナップル?と思うような香りが鼻へ抜け、強めの甘さが喉に広がる。
う〜むむ、伝えきれてないけど…ここらでギブ。
四合壜で10,500円て結構なお値段でしょ?だからと言って誰も彼もが好きになる味とは思わない。あでやかすぎるというのだろうか、決してじゃぶじゃぶ飲みたくなる酒ではないのだ。◯パも「山桜桃(ゆすら)」の方が飲んでは旨いという。
さりとて「花薫光」には意志がある。その味を知った者に、飲むシチュエーションを選ばせる。うら寂しい飲み方は似合わない。「私には晴れがましさに見合う華がある」と主張しているようだ。
何はともあれワタシにとってこの酒は、大晦日を家族とともに過ごすささやかな幸福感とシンクロする、特別な味であり、香りなのである。
by Yamepi|2007-12-19 10:10
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