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図書カード

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「今度こそ移動になるかも」3年前からそう言っていた友人Kさん宅に、いよいよこの夏辞令がおりた。転勤先は札幌で、夏休み2日目には引っ越すという。


ワタシはこの6月に最愛の母を(今なら臆面なく言える。生きてるうちに言ってあげれば良かったのに…。たいせつな人にはたいせつな気持ち、言葉と態度で示そうね)亡くした。最後までいつも通りに過ごしたいという母の意志によって、体力を奪う延命治療は避け、◯と◯えにも病気のことは話さずにいた。そういう訳で極々限られた人にしか母のことを伝えていなかったなか、闘病中から葬儀の後まで、外見上はごく普通にしていたが、実のところ不安、後悔の念、喪失感、いろんな感情が溢れては空っぽになることを繰り返していたワタシの気持ちに、事情を知っているKさんとHさんのでこぼこコンビがいつも温かく寄り添ってくれた。
そのKさんが遠いところへ行ってしまう。すごく悲しい。コンビのHさんに至ってはその話しになると目が潤みだし、ため息が止まらない。でも、札幌はKさんの故郷だし、ご両親も健在だ。見ず知らずの地へ行くよりずっと心強いだろう。いいこともたくさんあるだろう。ところが彼女は水戸に未練たらたらで、健気にも涙を見せないように努める姿がたびたびあった。泣きを誘うような話しを避けていた。送別会に皆でメッセージアルバムを贈っても、うちに帰ってから一人で見ると言い張った。だからワタシたちもいつも通りにふるまっていた。

でも最後の最後には、彼女のおかげでどんなに気持ちが救われたかを、やはりあらためて伝えたい。家財道具を送り出したら、クルマで東北を旅行しながら北へ向かうという。かさばる物はNGだ。なので、グリーティングカードに感謝の意を記し、そこに図書カードを同封した。
普通なら親しい友人とのお別れに図書カードなんて、色気のない贈り物は選ばない。でも、6年前とは札幌もだいぶ変わっただろうし、「落ち着いたらうつになりそうだ」などと気の弱さも見せている。うちにこもって寂しくなる暇がないように、好きな演劇を観に行ったり、楽しいところへ出かけるように、「るるぶかぴあでも買って」と書き添えた。薄っぺらいカードにこめた分厚い真意を、彼女なら理解してくれるはずと確信して。

» Tags:図書カード,

by Yamepi|2007-11-16 17:05

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