半月前に1人で行って
楽し〜い!と思ったヂョン・ヨンドゥ展。
どの作品もちょっとアイロニックなひねりが利いていて、
ヂョンさんたらいたずら好きなのね。
「ドライブ・イン・シアター」という体験型の作品では
予想に反した居心地の良さにちょっと驚いた。
ワタシ女優よ!というタイプでもないし
タクシーの匂いも苦手なのに、
1、2時間座っていたいと思った理由がいまだにわからない。
作品を見進めるうちに現実と虚構の境がどんどん曖昧になってきて、
「ブラインド・パーステクティブ」では
荒廃した世界に生まれた赤ちゃんや
間もなく人生を終えようとしている病床の人などには、
むしろ心安まる虚構のゴーグルをつけてあげてもいいのではないか
なんて、倫理に反したことを思ったりもした。
53分もある映像作品「マジシャンの散歩」もじっくり観てしまった。
騙されることが前提のマジックという真実に映像のトリックが加わり、
さらに耳障りの良い言葉で三半規管がやられる感じ。
現実、虚構、再び現実に戻ったと思ったら、
ちょっと行き過ぎて390°で止まった、のに気持ちは爽やか。
芸術館で新しい展示が始まると、
初めて鑑賞するときはなるべく前情報を入れずに臨みます。
それで面白かったら2度3度と通うのが流儀。
その度に新しい発見や以前とは違う感情に気付くのが楽しい。
芸術に疎い私にとって
現代ARTは映画と同じエンターテイメント。
今回はお気に入りだったゲルダ&ヨルク展のように通ってしまうかも。
2度目は感想を言い合える話し相手が欲しいと思っていたら、
タイミング良く「視覚に障害がある人との鑑賞ツアー」という
企画があることを知りました。
かねてから疑問に思っていた
視覚障害者の方への絵画や映像の伝え方についてお聞きするのにも
これは良い機会と思い、参加してきました。
作家ヂョン・ヨンドゥさんにインスピレーションを与え、
14ある作品中3つの作品に関わりを持つ、
水戸市の全盲のマッサージ師、白鳥さんがナビゲーターです。
視覚障害の方を含めた数人のグループで鑑賞してみると、
目に映るものを言葉に出して説明することで
初めて自分が何を見ているのかはっきり認識できるとわかりました。
そして「これはどうなの?」という質問に応えようとすると
今まで見えなかった部分にも目が誘導されて、
逆にこちらがガイドされている感じ。
印象的だったのは、
虚構の映像に惑わされて足下が不安になる晴眼者の話しを聞いて、
「視覚に頼っていると脳がだまされてしまうのね」という感想。
場合によっては見える人より見えない人の方が確かなのです。
ふりかえりの時間には他のグループの報告もお聞きして、
本当に得るものの多い経験でした。
当初の目的だった「いかに説明すべきか」という案件も、
自分なりに手応えのある答えが見つかりました。
ヂョン・ヨンドゥ展は来年2月1日まで。
映像作品が多いので、たっぷりと時間に余裕をもってお運びください。
水戸芸術館 http://arttowermito.or.jp/gallery/gallery02.html?id=413
» Tags:ヂョン・ヨンドゥ, 地上の道のように, 水戸芸術館, 白鳥建二,
Trackback(0) Comments(0) by Yamepi|2014-11-29 22:10
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