4、5歳くらいだったと思います。ワタシが初めて六角堂に行ったのは。
寒くて、風が強くて、激しく打ち寄せる波の飛沫が飛んでくるような日だったと記憶しています。でも誰と行ったとかは覚えてなくて。あの頃は建物の外側に今のような囲いはなかったような。
とにかく幼心に「こんな危ないところにちっちゃくて真っ赤なおうち…」という印象が強烈に刻まれました。
そして雷が大好きなちっちゃいワタシは「雷のときにこのおうちでずっと海や空を見ていたらどうだろう」と想像してワクワクしたのでした。その思いは後々まで根強く続いて夢に見たこともありましたし、想像の翼が違う形へと発展してゆくのでした。
国道を海側にそれてしばらく行くと、右手に大津港が見えてきます。
いきなり目に飛び込んできた大津港は深い青。きらっきらに光を跳ね返してるせいか、表面張力気味にもりもりと盛り上がって見えました。
今回の旅のカフェは、茨城県天心記念五浦美術館からスタート。
シーン1/五浦と天心。
まずは館内を巡りながら、五浦と岡倉天心についてレクチャーしていただきました。
開催中の企画展『再興院展時代を拓く作家たち』が良かったです!
大きな作品が多く見応え充分。名前を覚えていませんが、一番出口に近いところに掛けられていた現代女性作家による作品がとても緻密で、そのディテールを味わいに会期中にもう一度行けたらいいなと思っています。
この企画展は1月14日までやっています。☆茨城県天心記念五浦美術館☆
美術館から次の会場、五浦観光ホテルまでの海沿いの道のスリルったらもう!
自己責任の4文字を念頭に置いて撮影しました。
ホテルではおにぎりや鮟鱇のさつま揚げ、まだ温かいお饅頭などいただきながら、震災当時のこの地の様子などを教えていただきました。
そして話しの流れで急遽、特別室を見学させていただくことに。
本館に隣接する横山大観旧別荘(特別室)には、大観の愛用品も展示されています。
かつては本当に特別な人しか宿泊できないお部屋でしたが、現在は7名以上からの宿泊プランもあるそうです。☆五浦観光ホテル☆
シーン2/五つの浦をめぐる。
ホテルを出て岬公園まで歩きます。映画『天心』の撮影が前日から始まっていて、六角堂を見下ろす崖の上にセットが組まれていました。
爆笑ポイント、忠犬ジョンの碑。
きっと制作の依頼先を間違えちゃったんだなぁ。
これを作った石工さん、たぶんお稲荷さんの狐の像とかなら得意だと思うの。
悲しさが伝わらないところが悲しいジョン。
さて、今からあそこへ行って、茨城大学の小泉先生のお話しを聴くのです。
小泉先生が最初に話してくださった六角堂のトピックスは、飛石のこと。
門から海へ向かって下って行く小径には飛石が打ってあるのですが、ある日ここを訪れた方が「ほほぅこれは二連打ちですね」とおっしゃったと。
茶道では客は露地の飛石を伝い歩いて茶室の入口に至ります。
ただの踏み石だとおもっていたものが、茶道に則ったものであるとわかったことは、ここ六角堂においては重要な意味をもちます。
天心は六角堂に多様な文化を織り込みました。杜甫の草堂である六角亭子の構造(中国)、朱塗りの外壁と屋根の上の如意宝珠(インド)、茶室としての役割(日本)。
六角堂のコンセプトは、天心邸脇に建つ石碑に刻まれた「亜細亜ハ一なり」の言葉に通じる思想によるものなのですね。
茶室としての六角堂へのいざない、となると、飛石の打ち方にも茶人か庭師かはたまた天心の意図が込められているのかも。石に導かれる通りに歩いてみれば、そのリズムや視線の誘導など新たな発見があるかもしれません。
そしてなんと六角堂に入れていただき、中でお話しを聴かせていただくことに!
日本で3カ所しか見られない炭酸塩コンクリーションのこととか、ものが歪んで見えるガラス窓のこととか、なぜ窓の桟が3重になっているかとか、天心達言われてるほど極貧ではなかったんじゃないかとか、興味深い話題は尽きず。
これからはワタシ誰かときたら「ねぇねぇ知ってる?」なんていやらしく、絶対知らないだろう話しでガイドできちゃうもんね!
五つの浦があるから五浦。ここは六角堂の南側、小五浦。
こちらは六角堂の北側、大五浦。
日暮れ前、椿磯から臨むいわき平方面。
岬公園では東京からいらした6〜7名の男性グループに遭遇し、六角堂でも一緒になり、自然と小泉先生のお話しにも参加されていました。
陽気なおじさんたち、楽しい仲間ときれいな景色を見て、おいしいもの食べて、のんびりお風呂に入って、いい思い出ができたことでしょう。
でもそれだけではない何か知的な印象が、今回のあの方達の五浦の旅には残されたんじゃないかなと思うのは、期待しすぎでしょうか?
でもきっとそういうことだと思うんだな。
ガイドブックに載っている名所を辿るのは基本だけれど、旅の思い出って案外その先々で地元の人と交わした何気ない会話や、「へぇそうなんだ!」と思ったことが、その時の情景や声のトーンの切れ端と結びついていつまでも覚えていたりするじゃないですか。
そういう情緒が連動して残る記憶こそがいつまでも鮮明で、その旅を思い出すとっかかりになり、そこから芋づる式にあんなこともあったこんなこともあったと蘇ってくるものです。そして素晴らしく立派にお金のかかった物や場所でなくても、その旅の思い出しボタンにはなれるのです。
子どもの時の記憶と今回見た六角堂は似てるけれど違うところもありました。
でも正しい事実へと記憶の上書きをする必要はなくて、5歳の時の強烈な印象とその後もち続けた頭のなかの六角堂は、否定せずにだいじにそのままとっておきます。
だいぶ長いこと楽しませてもらいましたし、いつかまた行ってみたいと思う気持ちを持続させてくれましたから。
2012/12/08の五浦は見事な晴天。往く道も楽しかった。気持ちが充実してた。
海の青が深かった。
この日の記憶がいつかまた、五浦に行きたいと思わせるのでしょう。
朝とはまったく異なる表情、日没後の大津港
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Trackback(0) Comments(4) by Yamepi|2012-12-10 06:06
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