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My Holly Story モコの想い出(前編)

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小さい頃から犬を飼うのが夢でした。でも初めて飼うことができたのは、中学生になってからのことです。あまりにも遠い日のことで、どんないきさつで飼いはじめたのか思い出せません。でも家族がモコのことをどんなに愛しく思っていたか、その記憶はいつまでたっても忘れられません。

                  *                

モコは雑種の女の子。足とおなか周りの毛はまっ白で、頭から背の方は焦げ茶、薄茶とベージュのミックス。毛足が長くモコモコしてたのでモコと名付けたのです。
鼻先と足が細くて、とにかく器量良しでした。口元にはいつもうっすらと笑みを浮かべ、長い睫毛をパタパタさせながら伏し目がちにするところなど、ほんとに美人でした。そのうえ賢くて、穏やかで、とても品の良い犬でした。

モコはドライブが好きでした。モコを乗せる時は助手席を譲ります。だって後部席だと外が見ずらそうで、何だか困ったような悲しい顔をするから。
その代わり助手席のドアを開けてやると大喜びで、背筋をピンと伸ばして得意そうに椅子の上に正座します。決して窓の隙間から顔をだしてハーハーいったりしません。ずっとそのままの姿勢で、すまし顔の首だけ動かし、興味深そうに車窓を眺めているのです。

ブラッシングも大好きで、ブラシを手にして目を合わせるとニヤ〜ッと笑います。

そうそう、一人でお使いにも行けたんです!
モコはアイスクリームが好物で、家から200mほどのところにある何でもありの小さな商店に行くと、いつもアイスの冷凍庫の前でおねだりをします。
ある夏の日、母が「モコちゃん暑いね〜、アイス食べる?」と聞いたら、モコはすっかりその気になりました。
そこで小さな財布に百円を入れてくわえさせ、「◯○商店、おばちゃん、アイスちょうだーいって、行っておいで」と声をかけると、一人で歩き出したのです。こっそり後をつけてみたら、嬉しそうにお尻をふりふり、お店の方に向かって角を曲がっていきました。
その時、お店のおばちゃんに電話しておいたのかメモを持たせたのか、記憶が定かでないのですが、数分後、ちゃあんと小さな袋にお財布とホームランバーを入れてもらって、足取りも軽く帰ってきました。
それ以来、モコは自分でアイスを買いに行くようになったのです。時にはお財布にメモを入れて、七味とかパン粉とか、おうちの買い物を頼むときもありました。

                  *

ワタシが泣くと、モコは静かにそばにやって来てワタシに寄り添い、いつまででもじっとしています。そのうち服を通してモコの体温が伝わってきて、触れてる部分から徐々にあったかさがひろがっていきます。
そんな時モコの目はほんとに優しくて、見つめ合っていると犬とは思えなくなってくるのです。モコの体温と一緒に無言のメッセージがワタシの中にしみてきて、心が通じ合っていることを、はっきりと感じることができました。

成犬になると、モコは結構な大きさになり、外におうちを作ってあげました。家の西側の腰高窓の外に、間口2m奥行き4mほどのフェンスを囲い、一番奥に犬小屋を置いたのです。
やがてモコは仔犬を産んでお母さんになりました。お産の時はモコが神経質にならないように母だけが介添えをし、姉とワタシは窓の内側から見守りました。
お産はとてもつらそうで時間もかかりました。最終的に5匹もの赤ちゃんが生まれましたが、モコは腰が抜けてしまい、しばらく立ち上がることもできないほど疲労困憊し、そんなモコを刺激しないように、元気になるまでやはり母以外はフェンスの中に入らないことにしました。

ワタシは生まれたての仔犬を早く抱っこしたくてたまりませんでした。でも人の匂いを嫌がって母犬が仔犬を噛むこともあるというので、母も勝手に赤ちゃんを触らないようにしました。
しかしモコの方から、お乳に吸い付いている赤ちゃんを1匹1匹鼻で押し出して、母の手元に順に差し出してくれるのです。その母からワタシは窓越しに、モコが渡してくれた赤ちゃんを見せてもらいました。

お産から2〜3日経って、ワタシは柵の入り口に座り込み、小屋から一歩も出てこないモコに向かって「モコちゃん偉かったねー、赤ちゃん可愛いねー、」と話しかけていました。仔犬のきゅうきゅう甘える声は聞こえても、可愛い姿は見えません。でも仕方ない、もうしばらく我慢我慢。
するとモコがゆっくりと立ち上がり、1匹の仔犬を用心深くくわえてこちらにやってきたのです。そしてワタシの足元にそーっと置いてくれたのです。
「モコちゃん、わざわざ見せに来てくれたの?ありがとねー!モコちゃんの赤ちゃん可愛いね〜、いいよいいよ、もういいよ、はいどうぞ」両手に乗せた赤ちゃんを差し出すと、そーっとくわえて犬小屋に戻っていきます。
ところが、それだけでも充分感激して見ていると、驚いたことに、やがて別の1匹を同じようにして運んで来てくれたのです。
モコの意志が伝わってきたので、ワタシも少しずつ犬小屋の近くへにじり寄って行きましたが、自分からは手を出さず、モコが見せてくれるのを待ちました。そしたら本当に、とうとう5匹全部を運んできて見せてくれたのです。

モコ、ほんとに素晴らしい子。

                  *

でも残念ながら、モコはあまり長生きできませんでした。フィラリアという病気にかかり、とても苦しそうでした。蚊が媒介した寄生虫が、肺を蝕んでいたのです。薬もあまり効かず、息もつけないようなひどい咳が止まりません。母も姉もワタシも、そんなモコを見るのがせつなくて、看病しながら涙のとまらない日々が続きました。
そんなある日、突然モコが姿を消しました。家の周囲をくまなく探しまわっても見つかりません。象がそうであるように、動物は死期が近づくと人目を避けて死に場所を探すと言います。きっとそういうことだと思いました。
でもモコを一人ぽっちにしておくことなどできません。家族みんなで毎日時間の許す限り、ガサ薮の中まで分け入って探しました。

そうして5日ほどが過ぎたとき、家の目の前の草むらに、モコを見つけました。
もう息はしていませんでしたが、まだ体は柔らかく、温もりが残っています。
モコは一番苦しいとき、その姿を私達に見せないように何日もたった一人で苦しみ、いよいよさよならという時に帰ってきてくれたのです。

私達家族にとって、モコは素晴らしいパートナーでした。その短い生涯に、どれほど慰められたかしれません。
今、こうしてモコの思い出を書いていて改めて思いますが、モコは本当に犬だったのでしょうか。犬にあんな振る舞いができるものでしょうか。不思議です。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * *

◯とがこれを読んだあとで「これほんとにあったこと?」と聞いてきました。
もちろんすべて本当です。
長くなるので、続きは日を改めます。後編も読んでくださいね。

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Trackback(0) Comments(8) by Yamepi|2008-12-04 20:08

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