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[鯨エマの海千山千] 記事数:1742

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電話帳から

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電話帳といっても、分厚い冊子ではなく、
携帯の電話帳の話です。

私のガラ系携帯電話は、電話帳の登録上限が1000件。
当分大丈夫とおもっていたら、最近上限をおびやかす登録件数になってきました。
それで、おもいきって、5年以上かけていない電話番号は、
削除してみることにしました。

削除は勇気がいります。
しかも、5年連絡を取っていない人は
けっこういるので
そんなかでじゃあ、どの人を削除するのかというと、
なんともいえない罪悪感があります。

が、まあそんなことも言っていられないので
若干名、さよならいたしました。

すると・・・

先月、知らない男性から電話が。
私のことを知っているという年配女性Uさんの息子さんだというのです。

Uさん・・・姓も名も、あまりにありふれていて
すぐには思い出せなかったけれど、
お住いの場所を聞いてわかりました。
以前、私の創った映画を上映してくださった団体のおひとりでした。

息子さんいわく、Uさんは、亡くなったとのことでした。
「母の携帯にあった電話番号に
おひとりおひとり電話をしています」

ああ・・・・・

私のほうでは削除してしまい
彼女のほうではのこっていたのか。
とおもったとたんに罪悪感と同時に
人づきあいと時間の流れを、ひしひしと感じました。
30歳過ぎてから、人との付き合いがほんとうに広く浅くなっていきました。
大量の名刺を見ても、お顔を思い出せない、ということがあります。
2度目にあう人に、「はじめまして」といってしまったことがあります。
街であいさつされて、わからなかったことがあります。

これでいいのか・・・・

しかし、やはりキャパには限界があります。
新しい出会いを受け入れるために、
過去の何かを整理する必要は、あるのだと思うのです。
でも、どうやら、人間の脳みそというのは
完全に忘れるということがないらしいのです。
だから、何かの拍子に、あのひとが、ひょこりと、
思い出されたりするのでしょう。

Uさんに、映画上映の時におめにかかったとき、
私は自身の運営する高齢者劇団かんじゅく座を
これからどうまとめていこうか、
真剣に悩んでいました。
Uさんは、まさに、団体の長でしたが
彼女の話や、ふとした表情の中に
代表者の孤独を垣間見たのを、いま、思い出しました。
どことなく、さびしそうだったな・・・・・
私は、自分の将来を重ね合わせてみていた気がします。

立派に団体を立ち上げたUさんが、この世を去りました。
とっさのことで、電話口ではしどろもどろになってしまいましたが、
これからは電話帳から、記憶のアルバムに移行です。

Trackback(0) Comments(0) by 鯨エマ|2016-07-03 00:12

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