ついに、この日が来た。
いままで、何が起こっても一緒だった。
そして、はぐれても、また会うことが出来た。
私の愛車。
たしか笹塚にいたときに買った自転車だ。
そこから3度の引越しを経て
3度の盗難を潜り抜け、
オマワリには300回ほど止められ、
早朝も深夜も、この東京を走りぬけた。
北は大塚から、南は五反田まで。
東は飯田橋から西は・・・わすれた。
乗らない日はほとんどなかった。
それが、今日、ついにお別れしたのだ。
数週間前から走るときに
ガタピシガタピシ・・・・軋みがひどくなって
こういうことは数年前もあったので、また修理に出そうと思いながら
幾日も過ぎていた。
昨日ようやく、新井薬師を通ったときに
かつてお世話になった自転車へよって、説明をしたら
「これ、もう危ないですよ。」と。
「危ないって?」
車体と前輪が、大きくずれている。
「よく走ってますね。
でも、危ないです。」
「はあ・・・。」
今日は朝からすごいいい天気で
こういう日こそ、ウィンディにのって駆け抜けたいのだが
「危ない」を解決すべく、近所のサイクルスポットへ。
果してここでも「修理は無駄だ」といわれた。
散散同じことを言われ、それでも修理を続けてきたのだが
なんだか、今日はもう、ウィンディがかわいそうになってきて、
もう、休ませてあげたい、という気持ちになった。
潔く、決意を決める。
その場で新車を選び、
ウィンディを葬ることになった。
新車を買うのと交換で引き取りもしてくれるというので
お願いすることにした。
ウィンディのサドルには、廃車のマークとして、ガムテープが貼られた。
ああ、
晴の日も雨の日も、
喜びも悲しみも乗せて走り続けたウィンディよ。
私のいままでの人生で、もっともウネリの大きかった3年間を
君は見ている。
そう思うと、涙が止まらない。
このウィンディは、ほんとうにダメなヤツで
風にはすぐに飛ばされるし
ストッパーも角度がイマイチで
籠は、いの一番に壊れたし
使い勝手が悪かった。
赤いものだから、葬式のときは停める所に苦労した。
しかし、遠くからでもすぐにわかった。
光っているのだ。
だから、3度の盗難に遭ったにもかかわらず
遠くから見つけることが出来たのだった。
自転車やの店員さんが、新車の準備をしている
15分の間に、私は最後の別れをした。
徳永英明を、淡泊にしたような顔つきの店員が
涼しい顔で新車を持ってきたとき
私は全身に花粉を浴びたような顔つきになっていたのだろう。
「うちの子を宜しくお願いします。」
というと、淡泊な徳永は
「そんな、悲しいことを・・・きっと、この自転車も満足しているでしょう。」
などと、慰みの言葉をかけてくれた。
この子が、プレスにかけられて、
ぺしゃんこになるのかと思うといたたまれない。
しかし、連れて帰るわけには行かないのだよ。
ゴメンね、ゴメンね。
ありがとうね。
ほんとにほんとに、ありがとう。
~本日のありがとう~
ウィンディ、ありがとう。
風のように走りたいと願って
命名したのよ。
風になってね。
Trackback(0) Comments(4) by 鯨エマ|2010-03-20 23:11
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