他人の本棚を眺めるのが好きだ。
悪趣味かもしれないが、その人がどんなことを考えてきたのか、
今何を思っているのか、そして、どこへ行こうとしているのかを
覗き見るような心持ち・・・。
昨日はヴォイストレーニングで、新宿のJ氏の事務所兼稽古場へいく。
事務所っぽい、床と、スチール製の棚。
台所との仕切りも無機質な本棚がその役割を担っているのだが
なんとも魅力的は本が並んでいた。
朗読を教えていらっしゃるところだけあって
古典、童話から最近のものまで、幅広くそろっている。
その一番端の棚に、いくつか写真集があった。
「十七歳の地図」
橋口譲二氏による
全国の17歳に取材した、モノクロの写真集である。
私がこれを始めて手にしたのは
17歳のときだった。
図書館で見つけた。
中には、自分とはかけ離れた生活をする高校生がたくさんいた。
遠い県のたとえば雪の中に立っている十七歳の写真をみて
自分の生活範囲が本当に狭いのだろうなあと思ったりした。
ある写真で私はあふれてくる涙を抑えることができなかった。
それは、一場近い距離に住んでいる女子高生の写真だった。
神奈川県逗子市・・・・私が住んでいたのは大磯だったから
電車で1時間くらいだが、
友人がたくさん住んでいるところでもあったので
心理的距離はとても近かった。
見開き、片方に彼女が自室の床に座る写真、
その隣のページに
橋口さんが取材した、彼女の話した言葉が書かれている。
今でも忘れない。
私を泣かせたのは最後の一行
「17歳になんかなりたくなかった」
多分、私はここに、当時の自分を重ね合わせたのだろう。
その後十年たったこの17歳たちを追いかけた
「それから」という写真集が発売された。
「十七歳の地図」よりもだいぶ小さなサイズだが、
インタビューは大変読み応えがあった。
私は気になっていた逗子の女の子をさがした。
なんと、10年後に私が住んでいたのと同じ
東京は中野区に住んでいた。
パチンコ屋ではたらき、毎日を悶々と過ごす彼女に
私はまた涙した。
この本は買ったのだが、誰かに貸してしまったのだろう。
いま、私の本棚にはない。
もうすぐ、さらに、10年がたとうとしている。
橋口さん、また10年後を追いかけてください。
いや、もう追わないで下さい・・・
何を言っているんだ、あたしゃあ。
単なる読者でありながら橋口さんと、あの17歳たちとともに
今日も同じ空の下を生きる。
いつまでも心に残る、写真集だった。
~本日のありがとう~
大変充実したヴォイストレーニングでしたが、
「十七歳の地図」に再会したことは
思わぬプレゼントでした。
Jさん、有難うございました。
by 鯨エマ|2008-10-19 09:09
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