急な坂スタジオという、本当に急な坂の途中にある稽古場で
稽古がはじまった。
今回の芝居は路上で9シーンを同時に演じるという、
かなり風変わりなもので、
全てのシーンにほとんどセリフがなく、
動きと字幕だけで進んでゆく。
9つのうちの1シーンを私が演じるのだが、これがなんと、一人芝居。
つまり、私は字幕に合わせて体内時計で
10分の芝居を一人で進めてゆくというわけだ。
そして、これを短い休憩を挟んで10回繰り返す。
お客様は、歩いて移動しながら9シーンを見る。
ご自分の頭のなかで勝手につなげていただく・・・・
ちょっとフランス映画みたいで
私にとっては、まさに新境地開拓になりそう。
さて、どのシーンも少人数の出演者だが
私は一人芝居だものだから
共演者との交流がないどころか、
皆がどんな芝居をやっているのか
皆目見当がつかない。
とりあえず、アルゼンチンでやったときのビデオがあるというので
参考に見せてもらうことにした。
「眠れない女」・・・・
ブラインドの向こうに、女の部屋が。
おっと!下半身はパンツいっちょじゃないの!!
まってまって!
やばいよこれは!
多分きわどい衣装だろうとは思っていたけど、
いかんせん、私の生足は夢が消える。
一緒に見ていた別のシーンの役者が
「このシーンはセクシー路線なんですね。」
まさか、あたしにセクシー路線がくるわけないじゃない!
ムリムリ!
・・・・・といいそうになったところで
私はハタと、口をつぐんだ。
「私はこういう役が多い。こういう路線だから。」
そんな一言が随分私の役幅を狭めてこなかったか?
お局ナースがイメージだと、勝手に決めていなかったか?
ここは、新鮮な目で日本人を見つめてくれた、
このマリアーノという演出家にあたらしい視点をくれたことを
感謝しつつ、喜び勇んで演じるべきなんじゃないだろうか。
パンツいっちょにも挑戦しようじゃないの。
どこまでも不屈の努力をして役を作り上げようじゃないの!!
・・・と、珍しく清い決意をしたところに
「あ、鯨さんだ~~~!」
と、現れたのは7月にお世話になったE女史。
うちの舞台の仕込みに来て下さった女性だ。
「お久しぶりです!またよろしくお願いします!」
「鯨さんのシーンのセット、図面見ます?」
「あ、みるみる!」
E女史がおもむろにファイルを開いた。
あら?
なんとそこには、ビデオで観たセットとはえらく違う
どことなく4畳半的な庶民的な空間が・・・・。
これで、セクシー路線はありえないんじゃないの?
このセットでパンツいっちょじゃ、貧乏人になりはいないか!?
否、私はセクシー路線と決めたのだ!
(なんて、まだ演出家の話も聞いていないのに・・・)
16時に私のシーンの稽古が始まった。
マリアーノが「このシーンを一番最初に書いたのだ」と言った。
それをきいて、
「はい、もうどこまでもついて行きます!」
作者が最初に書くシーンというのは
やはり「なにか」があるのだ。
こうなったら、セクシー路線だろうが、貧乏路線だろうが、
とことん、とことんですよ。
で・・・衣裳は本当にパンツ?
それは、見てのお楽しみ~~~!!
横浜は、吉田町でお待ちしています。
Trackback(0) Comments(2) by 鯨エマ|2008-09-21 20:08
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