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この時期、お茶しにこない?と誘われたら、ワタシの手みやげは決まっている。
栗鹿の子。
茨城県水戸市郊外の御茶園通りに古くからある素朴な和菓子屋さん「はぶ製菓」では、ポプラ並木が色づき始める頃になると、店先に「栗鹿の子」ののぼりが立つ。栗が取れる間だけの期間限定商品だ。
白あんで薄くカバーされたこしあんを芯に、甘く煮た栗のかけらがごつごつと取り囲み、その上からつやつや透明の寒天で薄くおおわ れている。
この栗は水戸市近郊で取れた地のもの。店のおばちゃん曰く、栗鹿の子の季節になると、連日の鬼皮をむく作業で、親指の付け根辺りが箸も持てないくらい痛くなるそうだ。栗ごはんでも作ろうと生栗をむき始め、たかだか2〜3個で音を上げた覚えがあるワタシには想像もつかない作業だ。世の中いろんな物が100 円で買えるけれど、この1個100円にはそうとう手間がかかっている。
栗のお菓子は数々あれど、主役であるはずの栗がこれっぽっち!と悲しくなることも多い。その点、この栗かの子は、むいてる間、煮てる間に割れた栗の実を、大きさも形もバラバラのまま、とにかくたっぷり使っている。栗食べてる〜!と実感できる。
ある年、幼稚園の役員を引き受けた。その集まりに差し入れとして持参したことがある。バザーを開く準備が思いのほか大仕事で、決めなきゃいけないこと、準備することが山積みだった。本当に実現できるのか、誰もが不安を感じながら参加していたミーティング。考えも煮詰まったころ「いったん休憩しよ」の声に合わせて、 栗鹿の子の包みを開いた。人間、疲れたときには甘いものが効く。増してや女子だもの。白い箱の中でひよこみたいな色して並んだ栗かの子、小ぶりながらその実力を発揮した。一口食べたとたんに、ほわ〜んとゆるんだみんなの顔、いまでも思い出す。
by Yamepi|2007-10-11 16:04
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