シネマブラックバードvol.4『息もできない』を観てきました。
原題は韓国語で『トンパリ』=糞蠅という意味です。
ほんとにクソみたいな奴らの話です。全編を通して汚い言葉と暴力シーンに満ちて、それはCGによる衝撃波が目に見えるような破壊力ではなくて、観てるうちに口の中が鉄臭くなってくるようなリアルな痛みを感じる暴力。
サンフンとヨニの逃れきれない日常は窒息しそうな絶望感に満ちています。後半涙を拭う気配がそこここに感じられましたが、その涙の原因はただ痛ましいから、悲しいから、だけではないはず。もっと自分自身の原体験の奥深く、自分と自分の家族にまつわる様々な経験と感情の奥深くから溢れてくる涙だったのではないかと思いました。観客の誰もが劇中の誰かの息苦しさを自らに重ねていそうです。
ただ、日本の中流家庭で波平とおフネさんのような平和な両親の元に生まれ育った人に、韓国特有の親子関係の因縁深さ、貧しさの連鎖、血の濃さがどこまで伝わるだろうかとも思いました。その点、昔両親が派手な喧嘩をして父親が母親を殴る場面を見たことがあるとか、エキセントリックなアウトローとごにょごにょしたことがあるとか、抜け出せない日常に窒息しそうだったとか、そんな経験のある人の方が心のひりひり度は高いかもしれません。
それにしても力のある映画でした。期待通りぐらぐらと心を揺さぶられました。
静かに涙を流し続けたせいで、まだ頭の芯がキーンと痛んでいます。
そして時おり目を伏せたくなるようなつらいシーンの連続だったのに、4時間経った今、なぜか清らかな心境に落ち着いているのが不思議です。
主役も演じたヤン・イクチュン監督、すごいです。
この映画は世界的に高い評価を受け、都内では現在再上映中の館もあります。興味があればぜひ、ためらわずにご覧ください。
最後に、素晴らしい作品を企画上映してくれたシネマブラックバードプロジェクトに心からお礼申し上げます。ブラボー!
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» Tags:息もできない, シネマブラックバードプロジェクト,
Trackback(0) Comments(4) by Yamepi|2011-02-19 22:10
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