やっとのことでお雛様を出した。我が家のお雛様はお内裏さまと三人官女だけの二段飾りだが、それでも人形だけ納められた箱が縦横高さ1m四方はあろうか。雛壇の部材の箱は2m近くある。出すだけでひと仕事だ。
◯との初節句以来、毎年欠かさず飾ってきたが、昨年は初めて出すのをサボった。だから今回お雛様とは2年ぶりのご対面である。
とりあえず人形本体を取り出した時点で、お雛様とお内裏様を向かい合わせに置いてみる。夫婦だというのにこのお二人、いつも並んで正面を向いていなくてはならない。たまにはお互いの顔をじっと見つめあったりしたいのではないだろうか。そう思って、毎年お雛様を飾るときはすべての準備が整うまで、向かい合わせに座らせるのが習わしになっている。
三人官女の皆さんには円陣を組んでもらう。「今年もしっかりサポートしていきましょうね」とミーティングでもして、士気を高めておいてもらいたい。
あら?座って嶋台を捧げ持つ官女の白い襟に、緑の色がついている。サインペンのような鮮やかな緑の汚れ、確かしまう時にはついてなかったと思うんだけど…。湿気のせい?やはり年に一度は風を通さないとだめね。カビが生えていないだけ良かったと思うことにしよう。
漆塗りの壇が組み上がったらそれぞれを所定の位置へ。左男びなの右女びな、左たちばな右に桃。三人官女は左から結び、眉無し、口開き。小物もそれぞれ配置して、最後にぼんぼりを灯す。
せまくて生活感あふれる我が家の一角が、たちまち幽玄な別世界に。
実はワタシは人形が怖い。だから選ぶ時はとにかく顔にこだわった。最も善良そうなお顔の人形を探し求めた。これだ!と決めたうちのお雛様は、ぼんぼりの仄かな明りを頬に受けて、今年も柔らかく微笑んでいる。
学校から帰った◯と◯えは、嬉しそうに「あー、お雛様出したんだぁ」とまったく同じことを言った。そして言われなくてもその前に座り、手をついて「こんにちは」とお辞儀をした。感心感心。「きちんとご挨拶しないと、夜中に歩いて来てチクチクやられるよ」と言ったのが、いまだに効果絶大である。
翌朝ベランダ越しに隣の奥様Sちゃんに「やっと出したわよ」と報告。「面倒くさいですよねー出すの。今年は人形だけ並べて小物は無しにしちゃおうかな」と言うので、「出した方が良いよ、放っとくとシミが…」と官女の襟の話しをした。
「きっと何か食べたんですよ、箱の中で。フッフッフ」とSちゃん。それじゃまるで防虫剤のCMだ。なぜだかみんなお雛様を思いきり擬人化して見ている。向こうはこっちを見てどう思ってるのだろう?ーーーはっ!気がつけば、また人扱い。
Trackback(0) Comments(6) by Yamepi|2008-02-20 09:09
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