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長篇小説「田園憂愁記」(自伝風小説)

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長篇小説「田園憂愁記」(自伝風小説)
寺島柾史 著

青年論壇社 発行
昭和22年8月10日(1947)初版

※写真は昭和22年8月10日初版/¥40(定価)
●購入先/あきつ書店(東京都) 代金¥3,990(送料・税込)
●B6判・並製本・本文179頁
●装幀・挿絵あり(作者不明)

所蔵確認/北海道図書館/根室市図書館/北海道文学館



昭和20年3月(1945)、戦災者となった柾史は52歳だった。『わしは戦災者だ。空襲に遭って家を焼かれ、裸一貫で北海道へ逃げて来てから足掛け三年になるが、三年経っても戦災者で……とは、あまりに意氣地がないわけだ。細君はいつもそういってわしを笑ふけれど、三年経っても、五年、十年経っても、わしの生活状態が元にかへらぬのは、わし自身がよく見通してゐる。わしは生まれ立てのホヤホヤの人間のやうに、生まれかはらうと苦しんでゐるからだ』。本書は、風蓮湖畔近くの農家の納屋に暮らす柾史と家族の生活記録である。『皮肉と冷笑と偏狭と虚無と憤怒の書』とはしがきにはあるが、すべてを失った柾史の再起へ向けた苦悩の日々を知ることができる。「人造肉の夢想」(雑誌北の女性)の題材となったであろう、猫の肉を食す話は、「馬の肉」(雑誌みのり)と同じものだろうか。卵を産ませるために細君が大切に育た鶏を、訪ねて来た友と食べてしまった話など、貧乏を逆手にとった柾史らしいユーモアのある作品に仕上がっている。また、柾史の頑固でしたたかなところも垣間見ることができた。あとがきで柾史は、一年間暮らした納屋を追放されることになったと記している。『妻子を伴って流浪のたびに出るよりほかはあるまい』。また、『この退屈なる小説が君たちの机に上るころは、おそらくわしの唯一の遺書になってゐるかもし知れない』。



※注意:このブログは戦前戦後を生きた祖父の作品を紹介していますが、筆者自身の思想とは何ら関係ございません。また、その時代を反映した書物ゆえ「ゆたり」の主旨に反する表現があることを予めご了承ください。しかしながら、偏った思想や戦争がすべてを狂わしてしまうことを、私たちは事実として真摯に受けとめなければなりません。したがって、過去から学び、現在の情報を選択・分析する術を知ることが必要と考えております。




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» Tags:昭和22年, 小説, 青年論壇社, 自伝,

Trackback(0) Comments(0) by Yasumine|2008-10-08 09:09

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