毎年国民の休日である成人式。
平成産まれの華やかな成人達が一同に集う。
僕は成人式を知らない。
成人式の通知も記憶にない。
だから、成人式に出席していない。
スーツも20歳代後半まで買った事がなかった。
着物にいたっては、30歳過ぎてから・・・。
面接の時などは友人からスーツを借りてその場を凌いだ。
スーツや着物を着て式に参加することが
成人の日ではないと思う・・・。
成人の日は、二十歳の誕生日で充分だと思う。
僕の成人式は煙突の中にいた。
東京八重洲の華やかな地上から地下数十メートルには
八重洲地下街にある飲食店などの換気用ダクト(煙突)が
蟻の巣のように地中を這い回っている。
ダクト清掃のアルバイトは、八重洲の地下街が閉店した深夜から
早朝にかけておこなわれるキツい労働なのだ。
ダクトもいろいろな大きさがある。
大人が一人立つことができるくらい大きいものから
天地50cmほどの窮屈なものまで・・・。
長さは想像つかないが、数キロに及ぶのではなかろうか・・・。
僕たちはライト付きのヘルメットにつなぎを着て
夜中の0時頃からダクトの中に入り、
油などの汚れを金属製のヘラのようなもので落とす作業を行う。
一度ダクトに入ると数十メートルは出られない。
閉所暗所恐怖症の方には絶対無理な労働だ。
ドロドロになった油はポリ袋に入れながら進む。
ドロドロの油は比較的落としやすい。
ダクトの天井の乾いている油を落とすのがキツいのだ。
仰向けになった状態でを落とすので
粉状になった油が目に入るのだ。
これが、かなり滲みる・・・。
小さなライトだけが頼りの暗闇の中で
ネズミにこそ遭遇しなかったが、
ゴキブリの屍骸を何度か見ることがあった。
2人一組で、行動するので多少安心だが、
こんなところで動けなくなったらと
つげ義春の作品を思い出してしまう・・・。
相棒の方は当時大学3年生で僕の一つ年上だった。
あまり意識していなかったが、
その日、僕は20歳の誕生日だった・・・。
「僕、今日二十歳の誕生日なんです」って
彼に伝えた。
「へえー。それは、おめでとう」
「記念すべき二十歳の誕生日に煙突の中じゃ先が暗いね・・・」
「・・・そうですよね。あは・・・」
会話はそれだけで終わったが、
「おめでとう」と言ってくれる人がいて嬉しかった。
これが、僕の成人の日だった。
何故、このバイトを選んだかというと、
自分のバンドのコンサート資金稼ぎだったと思う・・・。
好きな事をやるためには、苦労も苦にならない時代だった。
いろんなアルバイトを経験したけれど、
自分の夢を追いかけている時、生きる手段としての仕事は
何だってできた・・・。
成人を迎えた若い方達にとっても不安の多い時代ではあるが、
無我夢中になれることを経験してほしいと思う。
偉そうにと思われるかもしれないが、
成人式って必要なのか?と
いろいろなことについて疑問に思ってほしい。
みんな同じで一緒って可笑しくない?って疑問に思って欲しい。
コンビニ的・チェーン店的な同一規格の格好悪さ・・・。
個性の時代と言われて久しいが、
「個性は一夜にしてならず」
「自由ほど責任あるものはない」だと思うのだ。
平成産まれの成人達のインタビューがTVで流れていた
「昭和という言葉へのイメージは?」という質問に
「昭和って古い感じ」「昭和?懐かしい」「昭和はダサイ」・・・
世代は確実に変わっていく・・・。
早朝、仕事が終わり渋谷へ向かうバスから
朝焼けに浮かぶ国会議事堂が実に爽やかに見えたものだ。
Trackback(0) Comments(14) by Yasumine|2009-01-14 14:02
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