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さくらの物語

 のどかな里山が広がるところに 
 
 おじいさんとおばあさんが居ました 
 
 ふたりとも80才を過ぎています
 
 おじいさんは事故で寝たきりに 
 
 腰の曲がったおばあさんが 
 
 おじいさんの介護をしていました 
 
  
 さくらの咲く4月 
 
 私達夫婦が偶然見つけた枝垂れ桜
 
 民家の庭先で見事に咲いてました 
 
 おばあさんの家です
 
 あまりの美しい桜に道沿いから見とれていると 
 
 おばあさんがニコニコと話しかけてきました 
 
 「お茶のんでがっしょ」優しい口調です
 
 見ず知らずの私達を迎え入れてくれました
 
  
 家の横は土手になっているので
 
 数本の枝垂れ桜は枝の下がりが綺麗です 
 
 このさくらは数十年前におじいさんが
 
 花の好きなおばあさんに植えてあげたそうです
 
  
 小振りな花と濃い目のピンクの枝垂れ桜
  
 根元には黄色のレンギョウ、白のユキヤナギ
 
 三色が一度に咲き乱れている様は
 
 小さな桃源郷です 
 
 
 寝たきりのおじいさんが見えるようにと 
 
 庭の一角にたくさんのチューリップと水仙
 
 
 「チューリップが終ったらグラジオラスを植えるの」
 
 話しの隅々に必ず、おじいさんにねと付く
 
 とても優しい語り口 
 
 高齢での介護は大変だろう… 
 
 でも微塵も感じさせずに明るい笑顔
 
 
 おばあさんに昔の農作業の話 
 
 お蚕様の頃の苦労話
 
 おじいさんの趣味の話し 
 
 たくさん、たくさん話し込んで
 
 来年また来ると約束してわかれました
 
  
 その後2年間さくらの時期に通い 
 
 親戚の家に行くような感じになり 
 
 おこわを蒸して待っていてくれたり
 
 山菜料理を作ってくれたり 
 
 桜の時期の楽しみでした
 
 帰り際、おばあさんが 
  
 「娘が帰っていくみたいだ」と目を潤ませて 
 
 
 おばあさんに会ったのはこれが最後でした
 
 
 私が腰を痛めたり、気持ち的に落ち込んでいたりと
 
 
 何となく行けなくなり数年 
 
 
 急におじいさんとおばあさんに会いたくなりました
 
 電話をかけると出たのは息子さん
 
 おじいさんは亡くなったそうです
 
 その後一年経たずにおばあさんが追うように 
 
 言葉がありませんでした
 
 「干し柿が出来たら送るよ」
 
 「お父さんとお母さん大事にしなね」
 
 「また来年も桜見に来てね」
 
 色々な言葉が思い出します 
 
 とても残念でなりませんでした 
 
 
 おじいさん想いのおばあさん
 
 おじいさんが居なくなって
 
 寂しくなったんだね
 
 最後にもう一度会いたかったよ 
 
 山菜料理食べたかったよ。 
 

 
 
 おばあさんの住んでいたところは
 
 
 福島県伊達市霊山上小国
 
 震災後私が心を寄せている所です
 
 
 

 
 ニュースで聞いた事がある地名でしょう
 私はここの地域の暖かさに凄く感動しました 
 震災後、原発事故後ここの人達も国の決定やら
 情報やらで翻弄した事と思います
 
 今年初め旦那と、桜が咲いた頃に
 お線香をあげに行こうと計画していましたが
 安易な気持ちで出掛けて良いのか
 今でも迷っていたりします 
 今年何度もブログにしようか迷っては消していたけど
 やっぱり年の瀬の最後に書きました 
 
 美味しいお米が取れる霊山の地
 人柄が優しく穏やかな土地の人々に
 安心が訪れますように願わずにはいられません
 
 2011年忘れられない年
 やっぱり福島が好きです。 
 
  
 おじいさんとおばあさん
 いつかお墓参り行くね。 
 
 
 
 
 

Trackback(0) Comments(4) by すわち|2011-12-31 22:10

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